3週間経過して

先日、夕方の薄暗くなった時間帯に国道4号バイパスを南下しました。
震災当日、自転車で必死になって帰宅したこと、その時の恐怖感と絶望感を思い出してしまいました。


地震発生時は仙台の会社にいました。永遠に止まらないんじゃないかと思うほど尋常じゃない強く長い揺れを体験直後、宮城県沿岸に大津波警報が出されたことを知り、家とムスメ、両親が心配で心配でどうしていいかわからなくなって会社の中をなにもできずにうろうろおろおろしていました。停電になったので会社のサーバのUPSをつないで見ていたTVで仙台空港津波にのまれるシーンが映ったときは、他の社員もいるのにそこで「どうしよう、どうしよう、今日ムスメ帰ってくるの早いのに(その日は短縮授業だった)、今まさに帰宅時間だよ、どうしよう」と半泣きになっていたような気がします。
会社の方が心配して自転車を貸してくれたので、手持ちの飲み物やチョコレートなどを持てるだけ持って、何も考えずとにかく早く帰りたい一心で必死に自転車を漕ぎ出しました。
通ったルートは、五橋〜愛宕橋河原町〜長町〜長町駅前〜新道〜郡山〜4号バイパス〜エアリ〜バイパスから1本奥の農道〜県道20号仙台空港線〜空港トンネル前交差点
エアリくらいまでは停電になったとはいえまだ明るかったのと、津波の様子など当然微塵も感じられなかったのでとにかく必死に前へ進みましたが、エアリを過ぎたあたりから様子が一変しました。
田んぼに水が入っているのです。この時期なのに。よくみるとゴミや木材などが浮いていて、津波がここまで来たのだとわかりました。東部道路の下の通路を越えてきたようでした。自宅はもっと海寄り。嫌な想像ばかりが頭をよぎります。
その辺りから一気に日が暮れ、暗いのとこの先がどうなっているのかわからないのと、断続的に続く余震で、さらに津波が来るのではないかという恐怖感でいっぱいになりました。でももう進むしかない。
そしていよいよ、空港へ向かう道、県道20号仙台空港線に入りました。空港トンネル手前の橋の手前で冠水が始まりました。道路上はものすごい渋滞、事故も起きていました。渋滞が幸いしてそこそこ明かりは確保できましたが、足元の水がどれくらい深いのか、どこまで広がっているのかも全くわからない。
信号も消え、事故や冠水で先に進めないことが分かりUターンする車の間を縫うようにして、水の深さにも一応注意しつつ、空港トンネル前交差点まで来て、「もう何もかもだめかもしれない」と思いました。
交差点は完全に冠水、交差点前のセブン・イレブン前は流木や車でめちゃくちゃ。冠水で身動きが取れなくなった車やトラック多数。人が降りてなにやら話をしていたので状況を聞いてみると、「(私の自宅のほうは)胸まで水が来ていると自衛隊が言っていた」「この深さじゃ車入ったら動けなくなる」「自転車でなんかいっちゃダメだ、危ない。明るくなるまで待ったほうがいい」とのことでした。
明かりも何もない、水音だけが聞こえる真っ暗な道路。そこから1キロ程先が指定避難所なので、必死に目を凝らしてみましたが、状況は全くわかりませんでした。ただ、冠水の程度は1Fの半分くらい辺りまでだったので、せめてムスメや両親が、自宅の2Fにいて、暗い中耐えていてくれればなんとかなるはず、と祈りました。
しばらくそこにいましたが、体が冷えてきたのととにかく現時点では先に進めないということがわかったので、諦めて駅前に止めていたクルマへ戻ることにしました。
ムスメと両親には途中何度も何度も電話やメールをしましたが、全く連絡取れず、絶望的な気持ちでクルマへ戻りました。この距離と時間がいろんな意味で一番つらかった。


その日はクルマで夜明かしをすることにし、残り少ないガソリンを温存するために、エンジンは掛けず、たまたまクルマに積んでいた毛布にくるまって暖をとり、カーナビのTVを見て状況を把握しようとしていました。クルマに乗っていると余震が来るたびかなり激しく揺れて、怖くて怖くてたまりませんでした。上長に状況をメールして、絶望的なことばかり考えていたところ、突然メールが。なんとムスメからのメールでした。無事でした。両親がムスメを連れて高い道路へ避難していたのでした。声を上げて泣いてしまいました。
とりあえず安心したので、あとはひたすら夜明けを待ちました。断続的な余震と、歩いて帰宅する人たちがひっきりなしに駐車場のそばを通るので、それも不安でうとうとするくらいしかできませんでした。長い長い夜でした。


翌朝、両親と連絡が取れ、おかげさまで無事に合流することができました。
私は幸運でした。


3週間経過して、やっと文章にすることができました。
ここ数日、生活状況は落ち着いてきたはずなのに今頃になってその時の恐怖感不安感が戻ってきたような気がして、ここ数日かなり気分的に参っていた気がします。こうして文章にすることによって少しは抜けてくれるだろうか。