今日読んだ本はこれ

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

この人の作品を読んだのは90年の芥川賞の「妊娠カレンダー」以来かも。
あの作品は繊細な文の中に生々しさ、ほんのりと毒がちりばめられていたと記憶している。でも、読んだ当時は妊娠なんて全く縁のない世界だったから、私の中では不気味さが先立って、それで終わってしまっていた。
今回の作品は、愛とか恋とかではなく、主人公とその息子ルートの博士への人としての思慕が静かに描かれていて、とても哀しく暖かい作品でした。
そして文学部出身の作者が、このような数字の美しさを発見し、難しい数式を流れるようにストーリーに融合させたのは、すごい。
素数って一口に言っても、こんなにいろいろな見方ができたのですね。


義姉の言葉に圧倒。
「あなたを覚えることは一生できません。けれど私のことは一生忘れません」